インタビュー NO. 1:堀岡 暦

ーそれでは本日はよろしくお願いいたします。まずは簡単な自己紹介をお願いします。


「生活の端々に挟まれがちな小さい印刷物」と、「私的空間と外空間

との間にあるもの(柵や植木など)」を日頃観察し、勝手に関連付けながら、収集、擬態、

再制作を行っています。


ー早速ですが最初の質問です。 堀岡さんは自宅に美術作品を飾ってますか? 飾っている場

合、どこにどのような方法で飾っているのでしょうか?


自分のスペースである作業机の周りに、小作品をいくつか配置しています。

写真立てに入れたり、手作りの台座に乗せるなどして、自分の視界に入る場所や、振り向いた

ら見える背後にそれぞれ置いています。周囲に雑貨や実用品が非常に多いため、それらと隣り

合わせざるをえない状況ですが、どうにかして秩序を保ちたいと日々試行錯誤しています。

壁は殆どが土壁なので、あまり壁掛けはしていないのですが、住居の中で唯一高さのある白い

壁(階段)には、額装した版画作品やポスターを壁掛けしています。


ー土壁ですか。なるほど、昔ながらの生活空間がイメージできますね。

それでは次の質問なのですが、堀岡さんは自分の作品が、どのように「飾られる」または「保

管される」か想定して作品を作りますか?


飾られることはあまり想定していません。というのも、額装込みでの作品を考えていないんで

すね。私の作ったものを所有している方が、飾るための工夫をしてくださるのは嬉しいことで

すし、その先のことは気になるのですが。そういった処置をせずとも、気軽に、かつ大事に

しまっておけるための梱包(作品がジャストサイズで納まるように誂えたボール紙製のケー

ス)を意識的に作っています。


ーそうですよね。

昨年の銀河での2人展の時、堀岡さん自作の梱包の美しさに感激しました。


作るものは紙を支持体にしたものが殆どで、自立しないものが多いんですね。それを包むため

の、しっかりとしたボール紙で誂えられたものがとても好きで。それ自体を立てかけておいて

カッコよく見えるものであったり、本棚に差しておけるものをイメージして作っています。

作品自体は見えないんですが、どういったものが入っているのか、ふと思い出してもらえる外

装になっているといいですね。


ー堀岡さんはインテリア として芸術作品を考えられますか? 絵が飾ってある空間とは、どん

なものをイメージしますか?


「インテリア」がどんな意味を持つのか、改めて調べてみたら「室内装飾」と出てきまして。

芸術作品は飾って鑑賞することが主な用途だと思うのですが、それには実用性を伴わないとい

うか。


ーうーん。実用性ですか。


それが空腹感を満たしてくれたり、よく眠れるようになったり、病気を治してくれたり、直接

的にそういった効果をもたらしてくれるわけではないから、そういう意味では「装飾」という

ことになるのかなと思っていまして。

ただ、飾っている芸術作品は生活空間の中にあるので、人はそれを世話しなければならない。

掃除をする面積は物理的に増えていき、人間の生活と行動に深く関わりその形態を変容させる

ものではあるなと、自分も絵を飾っていて思います。

この辺りは、意見としてまとまったものではなく、今考えている最中のトピックなのですが。


ーそうですね。この質問って意外とつっこんだ質問ですよね。


コロナ禍において、プライベートな空間からオフィシャルな場に向けて話す機会が増えまし

た。 自宅からオンラインミーティングに参加している人は、仕事だからしっかりとした自分

の姿を画面に映していて、背景にはだいたい絵がかかっていたり、植物がちらっと入っていた

りすることはあるのですが、あまり実用的な、生活用品を映り込ませないなと思いまして。


ー確かに、見えてる空間に生活感のあるものがあまりないですね。


私はそれが難しい、生活用品や道具にびっしり囲まれた空間にいるので、すごいなあと思いつ

つ。すると、その絵や植物は、対外的な自分を演出するための機能を持っているので、すごく

実用的だなとも思うんですよ。

そこに映るものが、誰もがアクセスできる、誰もが買える量販店の家具ではない、自分にとっ

て思い入れのある作品が自分の背景にあると、自分を説明するコミュニケーションツールとし

て機能させているようにも見えるなと。


ーなるほど。いい解釈ですね。


私は、定期的に手入れをせずともダメージの少ない、あるいは、楽に手入れができるように作

られている、そして掛け替えもある、所謂量販店で買えるような「インテリア」と、固有の特

徴をもつ「作品」とは、明らかに区別をして扱っています。 例えば装飾に溢れた部屋や、モ

デルルームのように飾り付けられた部屋といった、芸術作品と、実用を伴う/伴わない室内装

飾との線引きを曖昧にした上で形作られる生活の形や、それによって決まる人間の動線に興味

があります。

芸術作品は、他者の個性や意図が明確に含まれているものであるかもしれません。そういっ

た、自分本意で自由に扱いきれないものを私的空間に置くことが、日頃の思考や行動にどん

な変化をもたらすのか、今回の展示がさまざまな状況で生活する方々のお話を伺う機会になれ

ばいいなと思います。


ーそうですね。私も楽しみにしています。本日はご回答ありがとうございました。

インテリアという言葉について非常に興味深い考え方でした。


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堀岡 暦 HORIOKA Koyomi

1992年 東京都出身
2018年 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻版画研究領域 修了

《主なグループ展》
2018 なでたような跡がある(表参道画廊/東京)
2019 あらたよう&堀岡暦 作品展 Seals(レンタルスペース屋上/東京)
2019 Publish or Perish!-Graphica Creativa 2019 HEARAFTER(JYVÄSKYLÄ ART MUSEUM/フィンランド)
2020 Pause Print Pause (銀河101/東京)
2021 その場合、わたしは何をする?(藝大アートプラザ / 東京)
2022 Homemaking #1 回想 / 保存 (谷中トタン/東京)
Web Site : https://koyomihrok.wixsite.com/works

景色のつくりかた

「景色のつくりかた」 2022/10/28(金)~11/6(日) 13:00~19:00 (最終日16:00まで) Art Space 銀河101 大杉 祥子、川村 景、ニエト アルベルト、波能 かなみ、濱野 絵美、堀岡 暦、山﨑 慧