Artist Interview

ー簡単な自己紹介をお願いします。


大学では版画ではなく版表現を学び、固定された版画技法の表現方法に囚われない作品制作を

目指しています。現在は制作と並行して訪問診療のアシスタントをしており、患者さんの自宅

に入り内装を見る事があります、ほぼすべてのお宅に芸術に関わらずなにかしらの作品があり

身近に飾ってあると日々感じています。


ー川村さん自宅に美術作品を飾ってますか?


飾ってます。自分の作品を飾っています。額に入れて完成と考えているので多くの作品を額に

入れています。


ーどのあたりに飾られてるのですか?


家の中の広い壁に飾っています。

賃貸なので穴を開けれないので結果的にピンで紐を吊るす小さい作品がメインになります。


ー作品以外のものも何か飾られていますか?


インテリアショップに売られているような小物(海外製のノンキャクター人形や動物)やお菓

子の空箱などを作品と合わせて飾っています。


ーコレクションがメインの目的になっている様な物でしょうか?


はい、近いと思います。


ーご自身の飾ってる物の話でしたが、次の質問についてです。

川村さんはご自身の作品が、どのように「飾られる」または「保管される」か想定して作品を

作りますか?


制作の段階では特に考えてないですね。


ー考えている作家さんの方が少ない様ですね。展示の際は考えますか?


展示の時は考えますね。


ー展示終了以降というのはイメージしづらいのでしょうか。


しづらいですね。作品自体のその後は特に思う事はなく、画像としてweb上などに残り、多く

の人に見られる事が作品にとって幸せじゃないかと考えています。


ーそれでは最後の質問です。この質問はご自身が提案した質問ですよね。川村さんはインテリ

ア として芸術作品を考えられますか?


考えられます。

この質問をした時も展示メンバーの複数が知り合いの為、若干悩んだ後に【考えられる】と答

えるのかなと想像していました。

メンバー全員が芸大出身で、広域的に芸術を考えて来られていると思い、予想をした上でこの

質問にどう回答するか気になり質問を入れました。


ーでは絵が飾ってある空間のイメージというのはどうでしょう?


先ほどのアルベルトさんのインタビューで非日常が理想という事を聞いて、自分の中で思った

事は真逆で誰かの日常に自分の絵があればいいと思います、特に生活がある部屋などに。


ーなるほど・・・逆に生活や所有する人に同化するイメージなんですね。


そうですね。普段は仕事のほうで訪問診療のアシスタント事務を行っており、患者さんの家の

中に入る事が多く、どこのご自宅にも何かしらのアート作品やそれに近いものがあり、「これ

いいですね」とお声がけさせていただくと、喜ばれたり思い出を聞かせてくれたりする事があ

ります。


ーコミニケーションをとるきっかけや、そのご家庭を知るヒントになるんですね。

お仕事の関係からご自宅の中の空間を少し考える機会が多くなったのでしょうか?


そうですね、逆にギャラリーなどでホワイトキューブに作品があると違和感を感じる様になり

ました。


ー作家自身の普段の視点が、作品が飾られるイメージに影響がある様に感じました。本日はお

話誠にありがとうございました。


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川村 景 KAWAMURA Kei

1990 千葉県生まれ
2014 東京造形大学造形学部美術学科卒業
2016 東京芸術大学大学院美術研究科修士

《主な受賞歴》
2021 第8回 山本鼎版画大賞展 サクラクレパス賞

ーそれでは簡単な自己紹介をお願いします。


ペルー人と日本人のハーフで、10歳の時に大阪に来て、現在東京在住です。


ー自宅に美術作品を飾ってますか?


はい、飾ってます。


ーどのような方法で飾っていますか?


平面を壁に、立体はリビングの机。

作品は平面のみ、自分と他人の作品両方飾っている。

買ったモノは9割、良く作品を買う。


ー作品をご購入されることも結構あるのですね。


買う作品の大きさはA3ぐらい、油とドローイングを良く買う、版画は少ない

飾る場所は壁に立てかけている


ーまとめて同じ場所に飾られているのですか?


飾ると置くのはどうか→釘を打って展示している


ー他の作家さんですと、賃貸の関係もあるとおもうのですが結構空間を使って飾られているのですね。ギャラリーに近いイメージでしょうか。


ー次の質問はご自身の作品についてなのですが、アルベルトさんは自分の作品が、どのように飾られるか想定して作品を作りますか?


作ってはないです!


ー基本は平面作品を作る作家なのでしょうか。


特になく、自分が作りたいモノを作る、木版画やドローイングを描く。

A4くらいの作品を作っている、自宅で作品を作る。


ー日本の住空間では飾りやすそうなサイズですね。ただ、大学卒業後の作家さんは、自分の作品サイズと制作スペースはやはり強い関係性がありますよね。


自分の制作スペースと作品サイズが変わる。

大きさについてのこだわりは今は特にない。


ーインテリア として芸術作品を考えられますか?絵が飾ってある空間とは、どんなものをイメージしますか?


まあ考えられる、インテリアとしては作ってないが作品を買う時はインテリアとして考えている。

作品は作家のてから離れると全くかわる、作品、投資、インテリアと先の場所で変わっていく。


ー作品に対しての作家の意思にかかわらず、その先の場所の役割を与えられるのは気にしていないということでしょうか。


作る側のコンセプトはあるがお客様は選べない。


ー別の質問の様になってしまいますが、アルベルトさんは絵が飾ってある空間とは、どんなものをイメージしますか?


理想の空間、自分の好きなモノが飾ってある空間?魅力的な、え―と日常的な空間になってないといい!


ーなるほど。魅力的で非日常な空間になるために、作品を飾ることが貢献できると良いですよね。本日はインタビューのご回答誠にありがとうございました。


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ニエト アルベルト NIETO Albert

1984 ペルー生まれ
    大阪育ち
2013 京都精華大学メディア造形学科版画コース 卒業
2017 東京藝術大学大学院美術研究科修了

​《展示歴》
2022 ぎゅっと離すまたは​集まれ(ギャラリーそうめい堂)
2019 WOOD LIKE(3331CfSHE Gallery)
2019 目を閉じて、見る(B-Gallery)
2018 ////gift(ed)////(Altenative Space)
2018 Ecafe×shop CUATRO OJOS(月出工舎)
2016 Die Angewandte(ウィーン応用大学)
2015 NIETO×KAWAMURA(YOSEIDO GALLERY)
2014 第6回G-8(東京・京都アートゾーン神楽岡)

《収蔵歴》
町田市立国際版画美術館

ー本日はよろしくお願いいたします。簡単な自己紹介をお願いします。


版画・描画プロセスを軸にイメージを扱う作品を作っています。


ー濱野さんは自宅に美術作品を飾ってますか?


飾っています。

今は写真の作品のみで、ときどき作家の友人からもらったドローイングなども飾っています。


ーどこにどのような方法で飾っていますか?


自宅の部屋の窓の淵に立てかけて飾っています。

額縁には入ってなくてマットで挟んだマット装です。写真の作品を購入した時にマット装の状

態だったので、その状態のまま飾っています。


ーいつも特定の場所に飾られているのでしょうか?


気分によって、ピアノの上にのせたり色々場所を変えています。


ー場所を変える時は、特定のタイミングですか?


部屋の模様替えの様な感覚で気軽に場所を変えたりします。


ー先ほどはご自身以外の作品をご自宅に飾ることについての質問でしたが、逆に、自分の

作品がどのように飾られるかは想定して作品を作りますか?


想定して作る方だと思います。


ー作家として、ここにかざって欲しいという感じでしょうか? 希望というか?

それともあくまで想定の様なものでしょうか?


平面の作品が多いので、多分壁に飾るだろうなと想定しています。

額も自分で作ることがあるので、額装込みで制作を始めることもあります。 ただ場所・箇所

は想定していないです。壁に掛けなくて良くて、好きなところに置いて欲しい。 

特にこだわりもないので、所有者の方にお任せしてます。


ーそれでは次の質問なのですが、この質問が意外と一番難しいかもしれません。

濱野さんはインテリア として芸術作品を考えられますか?


うーーん。インテリア 、、、装飾的なものというよりも別の機能があって欲しいなと思いま

す。 私自身がインテリアをあまり考えない生活を送っているのも関係してる気がします。

私とインテリア の距離が遠い・・・。自分の部屋を飾るという意識が少ない、収集している

というイメージです。


ー装飾的な部分というよりは、あくまで収集した結果ということでしょうか?


そうですね。

収集した結果、装飾的な役割というよりモノとしてあるようなイメージです・・・


ーそれでは絵が飾ってある空間とは、どんなものをイメージしますか?


えーと、飾ってある空間か・・・あまり考えたことがない。ちなみに他の作家さんは?


ー例えば大杉さんはお洒落な空間というイメージ、堀岡さんはインテリア というワードに関

連しzoomでみえてる生活空間について話されていました。


確かにこう、絵が飾っている空間は開かれた、他人と共有されるような場所にあると思

います。 個人的には共有されない空間にもあって欲しいです。

でも作家の考えと作った作品は切り離された独立した関係だと思うので、所有者が収集した作

品をどういう意図を持ってそこに飾るのか、この展示で作家の私自身も少しでも関われたら嬉

しいなと思います。


ーあくまで所有する人の意思を尊重するということですね。今回の展示でどの様にみなさん

展示するか楽しみにしています。本日はお時間いただき誠にありがとうございました。


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濱野 絵美 HAMANO Emi

1990 東京生まれ
2015 東京芸術大学大学院美術研究科版画専攻 修了

《展示歴》
2015 form/category(Open Letter)
2017 不確かさの記録(Open Letter)
2018 rain to snow(ギャラリーそうめい堂)
2019 Soumei-do Contempory Exhibition Vo.1(ギャラリーそうめい堂)
2021 ぎゅっと離す または 集まれ(ギャラリーそうめい堂)
2022 第3回PATinKyoto京都版画トリエンナーレ 2022(京都市京セラ美術館)

《収蔵》
帝京大学美術館

ー簡単な自己紹介をお願いします。


木版画でモノタイプ(エディションが無い)作品を作っています。

やわらかな人肌をしっとりとした平面にじわっと表現しています。最近は張子も制作中。

最近は張子も制作中。

何かの素材を介して絵を描いていて、陶土やヤスリなどいろんなものに絵を描いたりもしています。


ー波能さんは自宅に美術作品を飾ってますか?


はい、わりと飾っていると思います。作品を買うのが好きなので、他の作家の作品がたくさん

あります。大体は本棚とか家具の上に置いてあります。

ポストカードや友達が作った小さいグッズなどは簡単にピンで壁に留めているものもありますが。

ー割と作品やグッズなど、コレクションがお好きなんですね?


うーん、コレクションというと、綺麗に収集しているイメージがありますが、、、購入してた

だ家に置いてある感じです。 整頓が苦手なので、購入した作品をきれいに飾るというか、置

いている、という感じで飾って(?)ますね。


ーそうなんですね。しまうよりみえる場所にあった方が良いという感じでしょうか。


そうですね。重なって画面が見えなくなってしまっている作品もあります。購入した作品の存

在を忘れないためにも、普段目につく場所にあるようにしてます。

掃除した時に置いてある作品の前後が入れ替わって意図せず展示替えということもよくありま

すね。


ー次の質問なのですが、波能さんは自分の作品が、どのように「飾られる」「保管される」

か想定して作品を作りますか?


全く想定していないです。


ー想定してない作家さんのほうが多いようですね。


想定して作るのはデザインの仕事なのかな?とも思いました。

自分の絵が誰かの家に飾られるイメージがあまりできません。普段の自分の作品が装飾向きじ

ゃないのもあるかもしれません。

展示風景は想定しますが、その先(購入後)の風景はあまり考えていません。


ー大杉さんと同じ様に、基本は出したいイメージが優先ということでしょうか。


そうですね。自分が作りたい&体が動くことを優先して制作します。

自分が作りたい&体が動くことを優先して制作します。


ー飾れるイメージはあまり持てないとのことですが、次の質問にうつりたいと思います。


波能さんはインテリア として芸術作品を考えられますか?

考えられるんじゃないでしょうか。

作る人、飾る人、作品が飾られた空間を見る人、の誰かに何かしらの意志や感情があって、何

かしら表現されているなら、芸術になってしまうと思います。

インテリアでも芸術でも、すぐに捨てるのではなく大切にしているものであってほしいです

ね。


ー絵が飾ってある空間とは、どんなものをイメージしますか?


じつは、絵が飾ってある空間を全然想像できてません、、。

絵ありきで考えてしまいます。「誰のどんな絵」というのが具体的になればなるほど想像しに

くいです。


ーなるほど、絵ありきですか。波能さんの中では作品が主体なのですね。本日はインタビューありがとうございました。


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波能 かなみ HANO Kanami

2015 武蔵野美術大学 油絵学科版画専攻 卒業

2018 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻版画研究室修士課程修了

《近年の主な展示》
2019 5days/表参道画廊
    できるだけ感情のないように(あるけど)/千代田アーツ3331akibatamabi21
2020 Girls in the paper./そうめい堂ギャラリー
2021 Time flies./Gallery美の舎
    その場合、わたしは何をする?/藝大アートプラザ
2022 作品のつくりかた/東京芸大版画研究室
    らららとうたう/日本茶喫茶ギャラリー楽風

《収蔵》
町田市立国際版画美術館
鹿沼市川上澄生美術館
高知県立美術館
ユバスキュラ美術館(フィンランド)


 ーそれでは簡単な自己紹介をお願いします。


専門学校の版画工房でインストラクターをしながら制作活動をしています。


ー大杉さんは自宅に美術作品を飾ってますか?


飾っています。

玄関や室内の壁に額装したもの、ポストカードとか友達の作品などを飾っています。

ある作品を購入して初めて自分の部屋に飾るために額装をしました。それは三熊さんに額装してもらいました。


ー三熊さんは今回ワークショップもしていただく「額縁工房片隅」の方ですね。他の物はどのようにかざられているのでしょうか。


そのほかのものはマステなどで貼っています。

壁を傷つけないようにしています。玄関や自分の机や向かいの壁など決まった場所にまとめてます。


ー逆にご自身の作品がどのように飾られる(保管される)か想定して作品を作りますか?


想定してないです。

自分が作りたいイメージや思い描いたものをそのまま作っている感じです。


ーご自身の表現媒体が版画だということも関係ありますか?


そうですね、版画作品が主なので紙ものとしてシートのまま保存か額装してあるのかなと特に意識したことはなかったです。

誰かの手に渡った自分の作品に関して気になってなかったんですけど、大学院修了する時に友達とお互いの作品を交換していて、その友人宅へ行ったときに自分の作品を額装して飾ってくれていた事がとても嬉しかったです。


ー話題が次の質問に関連しそうなので、次の質問に移ります。

大杉さんは、インテリア として芸術作品を考えられますか?

また、絵が飾ってある空間とは、どんなものをイメージするでしょうか?


自分の作品をインテリアとして考えられるか?インテリア=芸術ってことですか?


ーうーんインテリアとして考えられるのか・・・・・


考えたことはなかったけど作品がインテリアとして飾られているのはありだと思っています。


ー作品や絵が飾ってある空間って何かイメージありますか?


お洒落な人の部屋、雑誌とかにのっているような・・

お洒落な人の部屋にはアート作品が飾ってあるイメージがありますね。


ーお洒落な人が飾るもの・・みたいな?


そうではないと思いますが部屋に飾りたいという気持ちがないと関心がないと飾らないんじゃないかな・・


ー生活空間と美意識とか芸術に対して関心がある人、の様なイメージなんですね。


でも、子どもの絵とか身近な人が描いたものとか、そういうのを飾ってあるだけですごくいいなと思います。

ー生活が豊かな印象がありますね。


作品が飾られるのは豊かな印象があります。その人にとって大事なものだったらいいと思います。


ー大杉さんから質問もありましたが、 「インテリア として芸術作品を考えられるか?」というこのワードに対して、みなさん深く考えられる様です。


インテリアとして芸術作品を考えられるかという発想がなかったのでよく分からず考えるきっかけになりました。インテリアと芸術作品を切り離して見ていたからだと思います。

自分の考えを言語化するのが苦手で質問に対して短く応えてしまいがちですが、他の作家のインタビューを読んで私ももっと深く考えられたらいいなと思いました。


ーそこは人柄というか、それぞれの作家性だと思いますので、気にされなくてもよいのではないでしょうか。

今回はお話ありがとうございました。


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大杉 祥子 OHSUGI Shoko

1990 長崎県生まれ
2015 東京造形大学 造形学部 美術学科 絵画専攻卒業
2017 東京藝術大学大学院 美術研究科絵画専攻版画第2研究室 修了

《個展》
2018 「さよならカステラまた来てちゃんぽん」 文房堂ギャラリーCafe

《主なグループ展》
2019 「LUMINE meets ART AWARD 2018-2019」 ルミネ新宿 ルミネ2
     あきる野市アーティスト・イン・レジデンスに参加
2020 Spinner Markt スピナーマルクト スパイラルガーデン
     SPINNER MARKT-OUR GIFT- スパイラルガーデン
2021 【Tsubomi Collection Vol.5 Japan】NEW ROOM at Showcase Spiral 1F スパイラル
      その場合、わたしは何をする?~版画のひきだし~ 藝大アートプラザ
      房総里山芸術祭いちはらアートミックス2020+
      大杉祥子・高橋梓二人展『TWO GIRLS/ツーガールズ』 Art Space銀河101
Seed Stories 21_22 (全国14か所の画廊などで展示)
2022年 小説「動物になる日」前田エマ著 装画・挿画を担当

ーまずは簡単な自己紹介をお願いします。


版画や版画の技術を用いて主に平面作品を制作しています。

銀河ではスペースの柿落としの展示を企画していただき、その際は折り紙を使った大型作品を

発表しました。


ー早速ですが山﨑さんは、ご自宅に美術作品を飾ってますか? 飾っている場合はどの様な形

かざられているのでしょうか?


私は今一人で団地のファミリー向けの一部屋にアトリエ兼自宅として住んでます。

玄関入って正面の壁に一つ、作品を額装してかけてます。


ー現在は団地にお住まいなのですね。玄関は、絵を飾るのに良い場所ですよね。 他にも飾っ

ている場所がありますか?


居間に入ると自作の棚があって、手が届きにくい高いところは全部飾り棚という感じにして、

行けなかったけど見たかった展覧会のチラシとか、むかし版画を教えている実習でおばちゃん

が描いたヤギの絵とか、一緒に展示する大杉祥子さんのハガキ(年賀状)をかけていて、基本

的にその棚には額装はせずに、気になっている、気に入っている紙ものを立てかけたりアクリ

ル板にテープで貼っています。


ー実習のおばちゃんのヤギの絵を飾っているところに、山﨑さんの人柄の暖かさを感じます。  

一緒に展示される作家さんと仲がいいのですね。個人的にはアクリル板がどの様に使われて  

いるか気になります。


賃貸で壁に穴が空けられず、テープを貼っても跡がのこってしまったり。飾っているというよ

りかは、自分が見られるように置いています。掲示板的な。

その二か所と、あとは、制作途中のドローイングを壁に貼ったりしているところもあるんです

けど、作品を常に置いている場所は二か所かなという感じです。


ーご自身のドローイングに関してお話が出ましたが、合わせまして次の質問です。 山﨑さん

は自分の作品が、どのように飾られる、または保管されるのか、想定して作品を作られます

か?


ぜんぜん基本的にしていなくて、してないですね。ははは。

ハガキ…たとえば年賀状とか、御礼状だとか、確実に誰かの手に渡ることが分かっている、

相手が見えているものに関しては、しばらく届いた人の身のまわりに置いてもらえたら良いな

と想像します。ハガキって硬くて立てかけておけるかなということもあるので。

自分がDMを集めるのが好きなので、今回のDMも、色んな素敵なハガキを額装した風に気軽

に立てかけて、どこかテーブルの端っこに飾れたらなと、自分もそんなのが欲しいなと思って

つくりました。


ーなるほど。今回のDMは山﨑さんがデザインされて、折りたたむとDMサイズの額縁とし

て使用出来るんですよね。お話しされていることと、近いものを感じますね。

それでは次の質問です。山﨑さんはインテリア として芸術作品を考えられますか?

また、絵が飾ってある空間とは、どんなものをイメージしますか?


考えられます。難しい質問だなと思いますが、個人的には、芸術作品というのは基本見られる

という機能しかもたないものかと思うのですが、その存在によって否応にも空間を変容させる

側面もあると思うので、どうしてもインテリア的な領域にも属してしまうのかと思っていま

す。私が好きな作品・作風は装飾的な要素も多いので、自分の作品もそういうふうに機能する

のは好ましいというか望んでいるところでもあります。


ーインテリアというワードに、割とポジティブな印象をもっているのでしょうか?


クソ野郎と思うこともあるんですが~~(笑)でも、それもきっとあるよねという。


ーあはは!なるほど(笑) 絵の性質上仕方がない要素というところでしょうか?


それを目指しはしないというか、結果的にそういう機能をもつことはいやではない。

自分の目指す作品の方向性の中に装飾性というものは含まれているので。ハイ。という感じです。


ーそうですよね。この質問、作家的には結構難しいというか・・・もっとみなさんに聞きたく

なる話題ですね。最後に、他に何かこの質問に対して考えていることはありますか?


父が設計士で、父が設計した家に生まれ育っていて、天井も壁もベニヤ、床のフローリングも

含めて360度木目模様のある空間で、変な空間だったんだなって今は思うんですけど、当時は

分かっていなくて、そこに絵を飾ったりもしていたんですけど、壁の個性が強くて。


ーご自身の育った住空間が少し特殊だったと大人になってから気づいたのですね。壁の個性ですか。


木目の模様も顔に見えたりするじゃないですか。

そういう空間で育ってそれが原風景としてあるので、絵が飾ってある空間といったときに、

すごいきれいな所謂ホワイトキューブとかインテリア雑誌に載っているような空間に憧れます

が、見え方が根本的に違う家で育ってしまったので、展示の癖とか絵を作るときの癖としてそ

れが表れて、きれいな空間では少しぎこちなくなる・緊張するイメージがあります。

銀河はホワイトキューブと民家のあいのこのような空間ですが、冒頭にも紹介した、以前に銀

河で発表した折り紙の作品は、壁一面を覆ってどうにか自分なりに白い壁と折り合いをつけよ

うとしていた気がして来ました(笑)


ーなるほど。堀岡さんへのインタビューも踏まえ、それぞれの作家さんの原風景や、作家

自身の生活空間が、作家自身が持つ作品を飾るイメージに影響があるように感じました。

ご回答ありがとうございました。

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山﨑 慧 YAMAZAKI Kei

1984 静岡生まれ
2014 東京芸術大学 大学院美術研究科絵画専攻版画研究領域 修了


個展

2017年 葉っぱをつくる(See Saw gallery)

2015年 景感(寺町美術館&gallery)

2010年 山﨑慧 個展(アートスタヂオ&ギャラリー スズロハコ)

Web Site : https://keiyamazaki.tumblr.com/

ーそれでは本日はよろしくお願いいたします。まずは簡単な自己紹介をお願いします。


「生活の端々に挟まれがちな小さい印刷物」と、「私的空間と外空間

との間にあるもの(柵や植木など)」を日頃観察し、勝手に関連付けながら、収集、擬態、

再制作を行っています。


ー早速ですが最初の質問です。 堀岡さんは自宅に美術作品を飾ってますか? 飾っている場

合、どこにどのような方法で飾っているのでしょうか?


自分のスペースである作業机の周りに、小作品をいくつか配置しています。

写真立てに入れたり、手作りの台座に乗せるなどして、自分の視界に入る場所や、振り向いた

ら見える背後にそれぞれ置いています。周囲に雑貨や実用品が非常に多いため、それらと隣り

合わせざるをえない状況ですが、どうにかして秩序を保ちたいと日々試行錯誤しています。

壁は殆どが土壁なので、あまり壁掛けはしていないのですが、住居の中で唯一高さのある白い

壁(階段)には、額装した版画作品やポスターを壁掛けしています。


ー土壁ですか。なるほど、昔ながらの生活空間がイメージできますね。

それでは次の質問なのですが、堀岡さんは自分の作品が、どのように「飾られる」または「保

管される」か想定して作品を作りますか?


飾られることはあまり想定していません。というのも、額装込みでの作品を考えていないんで

すね。私の作ったものを所有している方が、飾るための工夫をしてくださるのは嬉しいことで

すし、その先のことは気になるのですが。そういった処置をせずとも、気軽に、かつ大事に

しまっておけるための梱包(作品がジャストサイズで納まるように誂えたボール紙製のケー

ス)を意識的に作っています。


ーそうですよね。

昨年の銀河での2人展の時、堀岡さん自作の梱包の美しさに感激しました。


作るものは紙を支持体にしたものが殆どで、自立しないものが多いんですね。それを包むため

の、しっかりとしたボール紙で誂えられたものがとても好きで。それ自体を立てかけておいて

カッコよく見えるものであったり、本棚に差しておけるものをイメージして作っています。

作品自体は見えないんですが、どういったものが入っているのか、ふと思い出してもらえる外

装になっているといいですね。


ー堀岡さんはインテリア として芸術作品を考えられますか? 絵が飾ってある空間とは、どん

なものをイメージしますか?


「インテリア」がどんな意味を持つのか、改めて調べてみたら「室内装飾」と出てきまして。

芸術作品は飾って鑑賞することが主な用途だと思うのですが、それには実用性を伴わないとい

うか。


ーうーん。実用性ですか。


それが空腹感を満たしてくれたり、よく眠れるようになったり、病気を治してくれたり、直接

的にそういった効果をもたらしてくれるわけではないから、そういう意味では「装飾」という

ことになるのかなと思っていまして。

ただ、飾っている芸術作品は生活空間の中にあるので、人はそれを世話しなければならない。

掃除をする面積は物理的に増えていき、人間の生活と行動に深く関わりその形態を変容させる

ものではあるなと、自分も絵を飾っていて思います。

この辺りは、意見としてまとまったものではなく、今考えている最中のトピックなのですが。


ーそうですね。この質問って意外とつっこんだ質問ですよね。


コロナ禍において、プライベートな空間からオフィシャルな場に向けて話す機会が増えまし

た。 自宅からオンラインミーティングに参加している人は、仕事だからしっかりとした自分

の姿を画面に映していて、背景にはだいたい絵がかかっていたり、植物がちらっと入っていた

りすることはあるのですが、あまり実用的な、生活用品を映り込ませないなと思いまして。


ー確かに、見えてる空間に生活感のあるものがあまりないですね。


私はそれが難しい、生活用品や道具にびっしり囲まれた空間にいるので、すごいなあと思いつ

つ。すると、その絵や植物は、対外的な自分を演出するための機能を持っているので、すごく

実用的だなとも思うんですよ。

そこに映るものが、誰もがアクセスできる、誰もが買える量販店の家具ではない、自分にとっ

て思い入れのある作品が自分の背景にあると、自分を説明するコミュニケーションツールとし

て機能させているようにも見えるなと。


ーなるほど。いい解釈ですね。


私は、定期的に手入れをせずともダメージの少ない、あるいは、楽に手入れができるように作

られている、そして掛け替えもある、所謂量販店で買えるような「インテリア」と、固有の特

徴をもつ「作品」とは、明らかに区別をして扱っています。 例えば装飾に溢れた部屋や、モ

デルルームのように飾り付けられた部屋といった、芸術作品と、実用を伴う/伴わない室内装

飾との線引きを曖昧にした上で形作られる生活の形や、それによって決まる人間の動線に興味

があります。

芸術作品は、他者の個性や意図が明確に含まれているものであるかもしれません。そういっ

た、自分本意で自由に扱いきれないものを私的空間に置くことが、日頃の思考や行動にどん

な変化をもたらすのか、今回の展示がさまざまな状況で生活する方々のお話を伺う機会になれ

ばいいなと思います。


ーそうですね。私も楽しみにしています。本日はご回答ありがとうございました。

インテリアという言葉について非常に興味深い考え方でした。


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堀岡 暦 HORIOKA Koyomi

1992年 東京都出身
2018年 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻版画研究領域 修了

《主なグループ展》
2018 なでたような跡がある(表参道画廊/東京)
2019 あらたよう&堀岡暦 作品展 Seals(レンタルスペース屋上/東京)
2019 Publish or Perish!-Graphica Creativa 2019 HEARAFTER(JYVÄSKYLÄ ART MUSEUM/フィンランド)
2020 Pause Print Pause (銀河101/東京)
2021 その場合、わたしは何をする?(藝大アートプラザ / 東京)
2022 Homemaking #1 回想 / 保存 (谷中トタン/東京)
Web Site : https://koyomihrok.wixsite.com/works

グループ展「景色のつくりかた」関連企画 展示作家インタビュー


今回の展示に関連し、芸術作品の所有や家に飾ることに関連した質問を展示作家同士から募り、その質問を元に、作家にインタビューを実施しました。

それぞれの作家には


1.自宅に美術作品を飾ってますか?飾っている場合、どこにどのような方法で飾っていますか?


2.自分の作品が、どのように飾られる(保管される)か想定して作品を作りますか?


3.インテリア として芸術作品を考えられますか?絵が飾ってある空間とは、どんなものをイメージしますか?


の3つの質問にお答えいただきました。


展示開催前までの毎週末(金・土/最終週は日曜日も)19:00に展示特設サイトにて順次公開予定となります。


作家のひととなりや考え方が垣間見える興味深い記事となりました。是非お楽しみに!